冷えと漢方療法

冷えと漢方療法

非常に長文となっていますが、じっくりと理解しながらお読みください。

病気が起こす症状は、急性疾患を除くと、多くが冷えを原因として表れます。
冷え?と言っても実際に冷えを認識出来る冷え性だけが冷えではなく、ほてりや発熱反応等も冷えが起こした病態と言えます。
西洋医学からは冷えの病態を認識する事ができませんが、冷えを中心に人体を見た時、西洋医学では解明できない病気の起こるシステムがこの冷えから体を守るために起こしている自然治癒反応である事がわかります。
詳しくは今からゆっくりと解説して行きますので、理解できるまで何度でも読み返してください。
冷えが起こす病態には、上熱下寒や表熱裏寒があります。

はじめに
今回、このページを製作するにあたり少しだけ私の考え方を述べさせていただきます。
東洋医学にしろ、西洋医学にしろ目指しているのは私たちの健康と疾病の改善だと思います。
医学と言えば、私達は西洋医学を中心とした環境で育ってまいりました。
医学の進歩は目覚しくこれまでは、いかに症状を抑えるかに全力が注がれ病原菌に対する抗生物質や各種炎症性疾患に対するステロイドのような強力な薬が開発されてきました。
しかし、これほど医学が進歩したにもかかわらず、アトピー性皮膚炎や喘息等の アレルギー性疾患、ガン、膠原病等の難治性疾患等は益々増えているのが現状です。
これは何を意味しているのでしょうか?
私達は、症状を抑えてもらう事が病気を治す事と勘違いしてきたのではないでしょうか?
症状を抑える事と病気を治す事は同じではないのです。
人間は本来、誰もが自然治癒力という素晴らしい力を持っています。
時にはガンでさえも治してしまう事があるようです。
この自然治癒力を最大限に発揮させる事が出来れば、どんなに素晴らしい事でしょう。
自然治癒力が最大限に発揮される時、時に症状は激しくなる事もあります。
これが理解できないと、いつまでたっても真の健康を取り戻す事ができません。
そこで今回人体の中で起こっている反応を陰陽論を使って説明し、自然治癒力の活かし方と自然治癒作用が起こす反応を理解してもらえればと思います。
但し、この先を読み続けて行くと、今までの常識が邪魔になり理解しにくい所もあります。
頭を軟らかくして、何度も読んで理解してください。
そして、誰もが本当に健康な体を取り戻して欲しいものです。
この先に書かれている概念は、私が学んできた東洋医学のバイブルである黄帝内経素問や傷寒論、金匱要略、中医学等から得られたエッセンスでもあります。
しかしこの陰陽の考え方は教科書的な漢方理論ではなく、実践的陰陽学でもあります。
東洋医学を専門としている医師、薬剤師、鍼灸師の先生方にも是非読んでいただき、症状の沈静化ばかりに眼を向けずに最も重要部分である人間の解毒、排泄、排膿等の自然治癒作用に眼を向けていただきたいと思っています。


陰陽


陰陽理論を利用した医学、すなわち東洋医学は陰陽の考え方を重視します。
では陰陽について少し説明してみます。


陰陽は自然界の万物を陰の性質、陽の性質の2種類に分けます。
但し、陰陽論は完全に対立した陰陽を表すのではなく相対的な状態を表します。
ですから、一方を陰とすれば反対側が陽と言う事になります。

陰は、暗い、寒い、冷える、下がる等のイメージがあります。
陽は、明るい、暑い、温まる、昇る等のイメージがあります。
このイメージを忘れずに人体を見ていきます。
すると以下の図のようなイメージが出てくると思います。


人体




このように、人体を陰陽に分ければ上部は陽、下部は陰の性質が強くなる事がお解りいただけると思います。
実際に足元は冷えやすく、頭はのぼせやすい場所でもあります。
サーモグラフィーで人体を見ると、上部と下部では5度以上の温度差が生じる事もあります。
ではなぜ、上部が熱く下部が冷えやすいかについて考えてみましょう。
私たち人間は、4足歩行の状態から2足歩行へと進化してきました。
すると、上下の高低差は4足歩行の動物に比べ非常に大きくなっています。
太陽の影響も受けやすく、熱は上へ上へと上がる性質からどうしても上部の熱が強くなりがちです。
また全身の体毛は動物に比べ少なく、汗腺の発達具合から考えてもわかるように非常に汗をかきやすい構造が出来上がっています。
これは体表面の熱を汗を通して排泄しているのです。
それだけ熱を排泄しなければいけない構造を持っていると言う事です。
つまり、上部や体表面では熱が多く陽の偏りが起こりやすくなります。
上記の理由で、下部では陰が上部では陽が偏ってしまい、陰陽の偏りが起こってしまっているのです。
陰陽はお互いに密接な関係があり、陰や陽自体が単独では存在できません。
陰陽の交流がしっかりとできれば、心身ともに健康が保てます。
しかし、陽である熱は陽である上部が居心地が良く、陰である冷えは陰である下部が居心地が良くなり、お互いが交流しにくくなってしまいます。
この状態が強まれば、冷えのぼせという状態が起こってきます。
この状態が起こる原因は人体の構造にも依存しているのですが、実は冷えに問題があります。
私たちは何も気にせず、体を冷やす食品や医薬品を摂取したり生活を送っています。
この為に人体内では、陰である冷えが強まり、この陰が上部を助ける事が出来ずに上部では熱症状が強くなってきます。
つまり、上部で起こるのぼせや熱症状というのは冷えが主な原因で起こっている仮の熱症状と言えます。
これを東洋医学では上熱下寒と言います。

上熱

上へ

 

人体

 

下へ


下寒


実際には上の図のように陰陽の偏りが起こりやすく、陽は上部に集中し、陰は下部に集中します。
つまり、人間は下部では陰が多い為冷えやすく、上部では陽が多くなり熱を持ち易い陰陽の偏りを起こしやすいのです。

さて、ここまでは人体の上下で陰陽を見てみましたが、この現象は人体の上下以外でも起こっています。
人体を立体として捉えれば、ありとあらゆる所を陰陽として捉える事が可能です。(陰陽可分の原則)

では人体を体内と体表に分けて陰陽を分類してみましょう。
体表面は熱を持ち易やすく、発熱やほてり等が起こり易くなります。
この体表面に熱が向かってしまう理由は、体内の冷えに原因があります。
体内とは、主に内臓(主に胃腸)を表しますが、内臓は非常に冷えやすいのです。
例えば、お腹は冷えやすいですね。
冷たい物を飲むとすぐに下痢してしまう人もいます。
実際にお腹を触ると冷たく感じる人も多く、昔から腹巻きがあるようにお腹は冷えやすい事を証明しています。
少し専門的になりますが、お腹は東洋医学では”脾”と言われる臓の一部であり、五臓の中では中心に位置しています。
体内の中心という事は体表からすると一番深い部位に位置しますから、太陽の光(陽)が届きにくく、どうしても冷えやすくなってしまう傾向があります。
また、経絡上では脾は太陰脾経と言われる経絡に分類されます。
この経絡に太陰と書かれているように最も強く陰(冷え)の影響を受ける経絡である事を意味し、冷えの影響を強く受ける事を暗示しています。
このように内臓は冷えやすいので、何とか内臓を冷えから守ろうとして自己防衛反応が起こり、内臓に熱を集中させて冷えから守ろうとします。
すると内臓には熱が集中しますが、こうして産生された熱は内臓に留まっている事が難しいのです。
熱の性質は上や体表面に向かう性質(陽の性質)があるので、熱はどうしても体内よりも体表面に向かってしまい、体表面では発熱やほてり等が起こりやすくなってしまうのです。
この状態を東洋医学では表熱裏寒と言います。
体表面に向かう熱症状、つまり発熱やほてり等は内面が冷えた事が原因で起こる反応なのです。
この表熱裏寒は実際に足元が冷える上熱下寒と違い、自覚できる冷えの症状がでにくく理解しにくいのですが、ほとんどの発熱反応やほてり、炎症症状等は表熱裏寒の状態であると言えます。
この表熱裏寒を理解しないと内面の冷えを見逃してしまいます。
見た目の症状を中心に考えるのではなく、その症状が起こった根本原因を考えてみれば表熱裏寒という原因がある事がわかります。
この表熱裏寒は上熱下寒よりも重要で、多くの病気の主要因になります。
また、内面の冷えが悪化し冷えが重症化してしまうと、発熱反応さえできなくなり全身が冷えの症状一色となってしまいます。
ここまで冷えが進んでやっと冷えを認識できるようになる頃には、内面の冷えはかなり重症化している事になります。


表熱

上へ

 

人体

 

下へ


裏寒

このように人体を上下、表裏で分類すると、熱や冷えの偏りが起こり易くなる事がわかります。
東洋医学では更に左右のバランスも重視します。(ここでは省略します。)
ですから、漢方療法にしても生活習慣にしても下半身や内面を冷やさないようにしなくてはいけないのです。
常に陰陽の交流バランスが取れるようにする為には、いかに冷えから体を守るかが大切なのです。
漢方療法では、上熱下寒や表熱裏寒を改善させる事が重要になります。


冷えについて

冷えの現す主な特徴
1、痛む
2、硬くなる
3、水分代謝が悪くなる
この3つの特徴は冷えの主症状ですので、しっかりと把握しておいてください。

冷えは非常に多彩な症候を現します。
当然冷え症も含まれますが、逆にほてりや高熱、微熱、湿疹、高血圧、低血圧、ホルモン異常、精神疾患、リウマチ、膠原病、ガン等ありとあらゆる症候が冷えと関連しています。
冷え症は自覚的に冷えがあるので解りやすいのですが、他のほてりや各種疾患の冷えについては理解しにくいと思います。
陰陽は相対性を見なければいけませんので、表向きの症状は内面の冷えに原因がある事になります。
夏に熱中症にかかる人がいますが、これは頭部への熱の集中が起こり相対的に内面の冷えが強く現れて卒倒やけいれん、意識を失う病態です。
ですから夏の暑い時期でも体内では冷えが起こるという事になります。
つまり、下部よりも上部、あるいは内部よりも体表面の方に熱を持っている状態が冷えと言えます。
冷え性がなくても、ほてりや発熱、のぼせ等があれば、冷えがある可能性が高いと言えるのです。
冷えは自覚的冷えを伴わなくても起こる病態である事を理解してください。
このように多くの表向きの症状は、冷えを主因として起こる仮の症状です。(陰陽の相対性)
特に冷えを感じないほてりや炎症性疾患は、冷えに対する警戒感が少なく病気を慢性化させやすくなります。
多くの難治性疾患はこの冷えを改善させる事で、驚くほど改善されて行く場合があります。
この冷えの改善を重視した療法が、足湯や半身浴、漢方薬、鍼灸療法等です。


冷えを起こす要因

冷えが起こる原因を人体の陰陽のバランスから見てきました。
これら以外にも内面や下半身の冷えを引き起こす要因がたくさんあります。

体を冷やす食事や飲み物
牛乳、生野菜、緑茶、ビール、水分等は体を冷やす性質があります。
熱い牛乳やお茶等を飲んでも結局体は冷やされます。
飲んだり食べたりする時の感覚ではなく、食品の持つ性質をよく理解しなければいけません。
特に水分は体を冷やすのですが、健康ブームや血液の流れ云々という間違った情報が流れているので、多くの人たちが摂りたくも無い水分を摂り続け体を冷やし続けています。
本当に恐ろしい事です。
体が冷える事(特に内臓)で血液の流れが良くなるわけがありません。
これは人体を上下で考えていない為に起こる決定的な間違えです。
科学的検査によるものという安心感が間違った解釈を正当化してしまっています。
人体が上下で起こす反応は違うのですから、水分の過剰摂取がいかに良くないか考えてみてください。
冷えがある人は、くれぐれも水分は控えめにしなければいけません。

医薬品(化学薬品)
いわゆる新薬というのは、人間の起こした病状をいかに抑えるかを研究し開発されます。
緊急時や救命用に使用する医薬品を除き、症状を抑える薬を飲むという事は、体本来の病態は治癒しないばかりか自然治癒作用の邪魔もしてしまいます。
これでは冷えを助長させてしまいます。
特に抗生物質や解熱鎮痛剤、ステロイド、安定剤等の長期使用は体を冷やし続けている事を覚悟しなければいけません。

一部の漢方生薬
漢方生薬の中にも体を冷やす生薬があります。
石膏、黄連、黄芩、黄柏、山梔子、大黄等の清熱剤。
桂皮の発表作用です。
桂皮は温める生薬なのになぜ冷えが起こるかと言いますと、温める部位が体表ですから、陰陽の相対性から考えれば内面は冷えてしまうのです。
特に桂皮は多くの漢方処方の中に含まれており、安易に使用すると危険な事もあります。
また、これに類する食品として唐辛子等の香辛料も上記と同じ理由で注意が必要です。

頭や目ばかり使う
頭ばかりを使う学者や数学者、研究者、目を酷使するコンピューター関係の仕事等は共通して体を使っていません。
つまり、脳内の活動が体を使うよりも多いのです。
すると頭に血が昇り易く(脳内が活動するには熱が必要)、相対的には内面や下半身は冷えてくるのです。
ですから、運動不足をしないように注意しなければいけません。

携帯電話やパソコン等の電磁波
携帯電話やパソコン、電子レンジ等は電磁波が発生しております。
この電磁波は電子レンジのように物質を化熱させる働きがあります。
しかし、相対的に内面は冷やされてしまいます。
電磁波の問題は東洋医学の世界だけでなく、科学的にも問題となっております。
私達は、携帯電話のように便利が優先された生活を送っていますが、その陰で体が蝕まれている事に気がついていません。
便利であるからどうしても必要な場合を除き、電源を切っておく心構えをした方が良いでしょう。

生活環境
私達は文明の発達と共に非常に便利な生活を送っています。
エアコンや冷蔵庫はその代表的な機器と言って良いでしょう。
夏の暑い時期にはエアコンがあり、夏でも快適な生活が送れます。
しかし、エアコンの冷気は知らず知らずのうちに体内に入り込み、様々な病気の元を作っています。
冷蔵庫も同じく、いつでも冷えた食品や飲料が手に入り、体内を冷やしてしまいます。
エアコンや冷蔵庫は便利で快適ですが、その裏側で私たちの体を冷やしている事を忘れてはいけません。

食べ過ぎ
食べ過ぎは勿論ですが、自覚できていない食べ過ぎがあります。
それは、食べたくも無いのに朝だからとか昼だからとか夜だからといった時間が来たから食べるという食生活は、体が食べたくないと言っているのにもかかわらず無理に食べている事になります。
これは食べ過ぎの範疇に入るのです。
すると体内では当然消化する能力を上回る食物が入ってくるので、消化しきれない老廃物や毒素が貯まりこんでしまいます。
排泄されない毒素が体内に滞りますと、生命活動を弱める働きがあります。
つまり、生命活動を陽とすればこの低下は陰になり、陰が強まればやはり冷えが発生してしまうのです。
食生活は重要で、特に空腹感を伴わない食事は危険信号が点滅しているのです。


冷えの自己診断

冷えを感じる冷え症はわかり易いのですが、内面の冷えによる表向きの仮の症状だけでは冷えはわかりにくいものです。
特に内面の冷えがある場合、以下の症状が出やすいので、注意深く観察してみてください。

●暑がりである。
●寒がりである。
●冬は寒がり、夏は暑がりである。
●暖房が嫌い、あるいは暖房でのぼせやすい。
●顔だけ赤くなりやすい。
●足元だけ冷たくなりやすい。
●冷房が嫌い。
●体がほてりやすい。
●動くとすぐ体が熱くなりやすい。
●体が硬い。
●肩や首がこり易い。
●小便が近い。
●小便の色が透明に近い。

いかがでしょうか?
これらの症候が多ければ、かなり冷えが進行していると考えてもいいでしょう。


病気が現す症状について

病気が起こす症状というのは、あくまで原因があってその結果として現れているに過ぎません。
冷えによって起こる症状は体からの警告や解毒反応です。
自然治癒力の現れとして解毒、排泄、排膿等が起こる場合、発熱、下痢、嘔吐、出血、痛み、炎症、こり等が出てきます。
しかし、これらの反応も体が起こす自然治癒力の表れですから、過度に恐れる必要はありません。
それよりも症状をすぐに抑えこんで、一時的な症状の沈静化をさせる事の方が体にとっては危険な事も多いのです。
これを続けていると、冷えが益々増えてしまい、気が付いた時には冷えが重症化している場合もあります。
西洋医学では残念ながらこの冷えに対する考え方がありません。
但し、病気が重症化し、本当の悪化を起こしている場合もあります。
これらの鑑別方法は、病気の症状は同じでも治癒方向へ向かっている場合、体調が良かったり、食欲、便通等が良くなります。
一方本当の悪化の場合、病気の症状と共に体調も悪くなります。


自然治癒作用

自然治癒作用が発揮されると、体内の解毒、排泄、排膿、発熱作用が強まり、思いもよらない反応が起こる事があります。
自然治癒作用が強くなる事は、一見すると悪化しているように見えますが悪化しているわけではありません。
この事は、なかなか理解しにくい事です。
しかし、これは病気を治す原理ですから、しっかりと理解してください。


病気の改善と健康とは?

病気を改善させるには、内面の冷えや下半身の冷えを改善させてあげなければいけない事を述べてきました。
また、自然治癒作用というのは人間が病毒(血毒や水毒)を内面に入れない為の解毒作用であったり、発熱作用であったりする事も徐々に理解できるようになってきたと思われます。
自然治癒作用が強まれば、病気の症状は思いもよらない位強まる事もあります。
私達は病状が激しくなると悪化していると考えてすぐに症状を抑え込ませようとします。
しかし、抑えこむ事は自然治癒作用からすれば、病毒を閉じ込めてしまう事もあります。
これは化学薬品だけでなく、瀉剤に分類される漢方薬でも同じ事が言えます。
病毒を閉じ込めてしまうと、見た目の症状は軽減されます。
すると治っていくように感じてしまう錯覚を起こしてしまうのです。
症状を抑えこむ事は、根本的解決になっていない事が多いのです。
改善を望むには、人間の持つ自然治癒力が発揮されやすいようにしなければいけないのです。
自然治癒作用が発揮される時、病気の症状は一時的に強くなる事がありますが、これを悪化と捉えてしまうと本当の意味での改善は難しくなります。
人間の解毒、排泄、排膿作用を邪魔しないように心がけていれば、必ず良い結果が待っています。
自然治癒力というのはどんな難病も改善させる力を秘めています。


冷えの改善に効果が期待できる方法

冷えの改善に有効な方法として、足湯、半身浴、漢方薬、鍼灸療法等があげられます。


足湯、半身浴

皆さんがご自分で出来る足湯や半身浴の仕方を解説します。
足湯も半身浴も下半身を温める療法です。
下半身を温める事で、上熱下寒や表熱裏寒の寒を取り去り、上部や体表面の熱との交流を促す事で自然治癒力を上げます。
つまり頭寒足熱という状態を作り出す事です。
お湯の温度としては、38~40度位のぬるま湯を用意します。
ここに足だけ、風呂の場合、下半身だけこのぬるま湯につかります。
時間的には15分~20分位を目標にしますが、、もっと長くても問題ありません。
決まった時間はなく、各自が気持ちが良いと思われる時間を基準にしてください。
体が温まりしっとりと爽快な汗がかける程度が理想的です。
ここで注意してほしいのは、決して熱いお湯を使用しない事です。
熱いお湯を使用すれば、すぐに体が温まる気がしますが、これでは体表面しか温まりません。
ぬるま湯にゆっくりつかる事で体の芯から温めてくれます。
まるで、魚を焼いている時と同じです。
強火で焼くと、表面しか焼けず、内側は火が通ってない事がわかります。
内側まで火を通すには、弱火で時間をかけて焼く事が必要です。
これが、足湯や半身浴にも当てはまるのです。
これを1日1~2回出来れば、理想的です。
足湯や半身浴で一番最後に冷水をかけてあげると更に効果的です。
これは、温めた足や下半身の熱を体内に入れて逃さない方法です。
最後に濡れた足や下半身、特に足の指の間をよく拭き乾燥させます。
足湯や半身浴は単なる入浴とは違い、自分で出来る唯一の冷えの改善方法です。
最近では足湯専用にフットバスなる物が発売されていますので、これを利用するのも一つの方法でしょう。
足湯や半身浴をすると、表向きの症状が激しくなる事があります。
しかしこれは自然治癒作用の解毒、排泄、排膿、発熱作用の現れですから心配いりませんが、どうしても苦痛が強くなるようでしたら、足湯や半身浴の時間を短くして徐々に長くして行けば良いでしょう。
難病でお困りの方は、是非実践してみてください。


漢方薬

漢方薬としては、上熱下寒や表熱裏寒を治す処方が中心になります。
生薬としては、乾姜や附子が基本となります。
漢方薬は乾姜や附子だけで使う事は無く、処方の中に含まれた形で使用されます。
乾姜や附子を含んだ処方は多くの種類あり、それぞれ使用方法が違います。
ですから漢方療法を行なう場合、この冷えの概念をしっかりと把握している先生に相談する必要があります。
一方、桂皮を含んだ漢方薬は表を温めてしまうので、表熱裏寒の状態を強めてしまう危険性があります。
桂皮を含んだ処方は多く存在し、注意して使用しないと思いもよらない事が起こりますので、ご注意ください。


鍼灸療法

鍼灸療法に関しては、この冷えの概念を持っている鍼灸師の先生にご相談の上、鍼灸治療を行なってください。


最後に

病気の改善は、意外に単純な事かもしれません。
病気は、人間が自分自身で自然に治そうとするのです。
病気は治すものではなく、自然治癒力が発揮されれば自然に治そうとするものです。
私達は西洋医学の中で育っているので、病気を治す事は症状を抑える事と思い込んできています。
しかし、病気を治しているのは自分自身の自然治癒力で、自然治癒力は体内の冷えを改善させるために、解毒、排泄、排膿、発熱等を起こします。
表面上に現れる症状としては苦痛を伴う事が多いのですが、これは自然治癒作用の表れと言えます。
この苦痛は、本来悪い事ではなく、多くが自分の体を守る為に行なっている反応なのです。
漢方療法にしても、足湯や半身浴にしても自然治癒力が最大限に発揮されるようにする為の一つの方法であって、症状を抑える為の方法ではありません。
この事をいつも忘れないで欲しいし、ある程度の苦痛を伴う事もある事をよく理解し、皆さんが本当の意味での健康を取り戻す事を願ってやみません。


参考文献

中医学における陰陽の臨床応用 木村 勇 2001年7月15日 東海中医学研究会
自然治癒力と解毒について 木村 勇 2002年6月16日 東海中医学研究会
中医基礎理論 東洋学術出版社
中医営養学 山崎 郁子
黄帝内経素問 上、中、下巻 東洋学術出版社
黄帝内経要覧 遼寧大学出版社
意釈黄帝内経素問 小曽戸 丈夫、浜田 善利
傷寒雑病論 東洋学術出版社
傷寒論解説 大塚 敬節
漢方概論 藤平 健、小倉 重成
漢方診療三十年 大塚 敬節