アトピー性皮膚炎

はじめに

アトピー性皮膚炎は、決定的な治療法が無い為に多くの方が苦しんでいます。
原因がわかっていない現状では、全て対症療法しかできない事を意味します。
にもかかわらず、次々とアトピーに効くという治療法や健康食品、民間療法等が出現してきています。
これは、今までステロイド等で皮膚表面の炎症を抑えこんでしまった為の代償を他の療法によって改善させるべく望みをかけている現れでもあります。
ステロイドを使わないようにすれば、ステロイドの害はそのうち落ち着きますが、アトピーを根本から改善させるには、皮膚に起こっている痒みや発赤、滲出液等を中心に見ていては良い結果は望めません。
では、アトピーの主因はと言えば体内の冷えが主となる表熱裏寒という状態にある事です。
体内の冷えについては、冷えと漢方療法を熟読して欲しいのですが、体内の冷えが強まると上部や体表面には熱の偏りが起こります。
体内の冷えによって代謝できずに残ってしまった血液や水分は汚れてしまいます。
汚れた血液や水分は熱の影響を受け、上部や体表面へと向かって行ってしまいます。
ですから、アトピーの方は上部や体表面では、暑がり、ほてり、むくみ、痒み、滲出液、出血、発熱等の熱の症状を持ちやすく、一方下部や内面では便秘や下痢、軟便、足元の冷え、疲れやすさ、低体温等の冷えの症状を起こしやすいのです。

アトピー




アトピー性皮膚炎は改善するのか?

いきなり本題に入ってしまいましたが、改善とは何かという事を少し考えてみましょう。
今この文章を読んでいる人は、自分自身がアトピーで悩んでいたり、あるいは家族にアトピーで悩む人がいると思います。

さて皮膚がきれいになれば良くなっていると言えるでしょうか。
私はそうは思いません。
なぜなら皮膚というのは、内臓の鏡と言われるように皮膚表面がきれいになっても内臓機能が回復しているとは限らないからです。
これを証拠にステロイドによって皮膚がきれいになっても、ステロイドを止めればまた以前のようなみるも無惨なアトピーを繰り返してしまいます。
ステロイド等で皮膚の炎症を抑えこんでも汚れた水分や血液が十分に排泄されていなので、汚れた水分や血液が無くなるわけではありません。
ですから、皮膚表面だけでなく、体調を含め身体全体の調和がとれ、解毒作用がしっかりと発揮され、自分自身で体内の水毒や血毒を汗、便、尿等を通して完全に排泄出来るようになった時が改善され健康に近づいていると言えます。
この意味での改善をめざすには、皮膚表面を皮膚としてみるのではなく、皮膚は身体の一部であり、内面の冷えを取り、解毒反応を強め身体を正常な状態にしてあげなければなりません。
この点で東洋医学は、生体の陰陽バランスを重視する療法でもありますし、特に内面の冷えを改善させる方法が確立されているので、時間がかかっても健康に近づける事が出来ます。
一方、自然治癒力が強まると、ある程度の苦痛を伴う事がある場合もあります。
解毒反応を強める事はある程度皮膚の症状は強くなる傾向があるからです。
つまり、発赤や痒み、炎症反応等が強くなる方もあります。
これを悪化と捉えてしまうと、本当の意味での改善の道は閉ざされてしまいます。
この解毒反応はアトピーの程度によりさまざまですが、数ヶ月~1年以上苦しむ人もいます。
数年間苦しんできたアトピーがあるという事は体内の冷えはかなり蓄積されており、老廃物や水毒、血毒等もかなり重症化しているわけですから、短期間で完治させるには無理があります。
皮膚を中心に病態を見て症状が激しくなると、どうしても悪化と捉えがちです。
しかし、内面の冷えが改善され、自然治癒力が十分に発揮されれば、アトピーは正常な皮膚に近づく事ができると言えます。
皮膚の症状に一喜一憂せず、がんばってください。


ステロイド依存とリバウンド

アトピー患者のほとんどが、ステロイド薬を使用しています。
あるいはステロイドと知らないまま使用し続けている人もいます。
いずれにしてもステロイドは使いたくないと思っている人がほとんどだと思いますが、ステロイドは非常によく効く為しかたなく使っている人も多いと思います。
ステロイドは皮膚に起こる炎症を抑えてしまうのですが、これを続けていると、解毒、排泄の道を閉じてしまうので、内面の冷えが形成されてしまいます。
またステロイドの急な中止により、リバウンドと言われる症状が起こります。
この現象は、閉ざされていた皮膚の解毒の道が急に開く為、内面の水毒や血毒は一斉に体表面へと向かおうとします。
車道で言えば、幅の狭い道路から急に幅の広い道路が出来たようなものですから、交通渋滞が解消された時のように、一気に解毒が強まり、急激な悪化、発熱(高熱)、むくみ、滲出液が止まらなくなる、脱毛等のリバウンド症状が現れます。
このつらさは経験した人にしかわからないと思いますが、このつらさに耐え切れず、多くの人が再びステロイド依存へと向かって行ってしまいます。
リバウンド現象は、悪化の代名詞のように言われていますが、実は自然治癒力が起こしている反応なのです。
このように人間が起こす自然治癒反応は、時にリバウンドのような急激な症状を出す事もあります。
この間に起こる反応に恐怖を抱き、治らないんではないか?あるいは悪化しているのではないか?という不安の方が勝ってしまうと、結局ステロイドに戻ってしまう人も多いです。
リバウンドの期間は個人差が有りますが、数ヶ月から1年以上かかる人もいます。
この時期が一番つらく自殺を考える人もいるくらいです。
リバウンドの苦しさを乗り切り、症状が一旦沈静化すると、症状は楽になります。
リバウンドを乗り越えて、漢方治療を続ければ、アトピー性皮膚炎の根本改善が出来るでしょう。
注意:ステロイドの急な中止は、二次感染や急激な悪化を伴いますので、専門家にご相談ください。

外用薬とスキンケアについて

外用薬については、基本的には使わない方が良いでしょう。
軟膏の基材となる白色ワセリンでさえも、皮膚の汗腺を閉じてしまい、解毒反応の邪魔をします。
どうしても肌の乾燥が気になる方は、解毒反応をあまり邪魔しないベビーローションを使用してみてください。
しかし、これでも合わない人がいます。
そういう人は外用は使用しない方がいいです。
また、アトピーに効くと言われる高額な商品も出回っていますが、これはやめておいた方が無難です。
これらは、余分な化学薬品が含まれている事が多く、アトピーの症状を抑える成分が自然治癒作用の邪魔をする事になるからです。
また、外用はあくまで補助ですから、アトピーに劇的に効くのはステロイド以外に無いと思ってください。
次に治療目的に使われる漢方軟膏ですが、代表的な物に紫雲膏や神仙太乙膏、中黄膏等が有ります。
漢方軟膏は基材としてゴマ油が使用されますが、これは天然の成分ですから、皮膚の解毒反応を邪魔しません。
中でも、中黄膏をおすすめします。
中黄膏には、清熱の生薬が多く含まれアトピーの性質から、この軟膏が一番合うのではないのでしょうか。
ただし漢方の軟膏には難点が有り、色とにおいの問題が有ります。
色はどうしても天然の生薬を使用している為、衣服や下着に付着すると取りにくいし、においもかなり強烈なのが難点です。
石鹸は余分な物が入っていない単純なベビー石鹸が良いでしょう。
高額な石鹸やアトピー専用石鹸等はいろいろな余分な成分が含まれておりあまりおすすめ出来ません。
いずれにしても誰にでも合い一番良い物は存在しないと思った方が良いです。

民間療法と健康食品について

民間療法や健康食品については非常に種類が多く、インターネットで「アトピー」と拾っただけで数え切れない位の情報が出てきます。
それだけ、アトピーに対する決定的な治療法が無い事を意味します。
以下に代表的な物について私個人の考え方を述べます。

超酸性水
簡単に言うと皮膚の表面を少し焼いて、殺菌と皮膚の再生能力に期待する療法ですが皮膚が薄くなるにつれて、超酸性水をかけると非常にヒリヒリして苦痛を伴う。
殺菌という面からみれば納得できる部分も有るのですが、常在菌のバランスを壊す事にもなります。
つまり皮膚表面には悪い菌ばかりでなく、この悪い菌を防ごうとする菌も存在しています。
このバランスが大切で、いつもいつも殺菌してしまうという事は常在菌のバランスを壊す事になります。
また皮膚のみの再生能力には限界が有り、化膿防止として一時的に使用する場合を除き超酸性水だけを連続使用する事はあまりおすすめできません。

イソジン療法
イソジン(うがい薬ではありません)による殺菌という点を考えれば、上記の超酸性水と共通している部分が多い。
上記と同じ理由であまりおすすめできません。

温泉療法
温泉に行ったり、自宅に温泉水を送ってもらい湯治療法を行う。
温泉に入る事でストレスやイライラからの開放が期待出来、自律神経の安定をはかる。
アトピーの多くがストレスによって悪化する事を考えれば良い療法の一つと思います。
しかし、温泉に行くには時間的に余裕のある方を除き少々無理があり、温泉水を送ってもらう方法もかなりの高額な出費を覚悟しなければなりません。
温泉療法は血行を良くしストレスやイライラからの開放という点ではすぐれていますが、温泉に入り過ぎる事で体表面を温め過ぎてしまうので、相対的に内面が冷やされて自然治癒力の低下を招く事もありますので注意が必要です。

クロレラ
クロレラは体を冷やす性質があり、アトピーの炎症には良い気がするかもしれませんが、冷えが強くなると解毒作用が弱ってしまいます。
改善がみられない場合は注意が必要です。

ニンニクエキス
ニンニクは、中医学では大蒜(たいさん)と言い味は辛く、性質は温性である事がわかっています。
つまり、体表面を温めやすいニンニクは、相対的に内面の冷えを助長させてしまう事があるのでこちらもほどほどにしておかなければいけません。

SOD食品
SODはスーパーオキサイドディスムターゼの略称で活性酸素除去作用が有るといわれています。
SODはステロイドの副作用を防止すると言われていますが、SODを使っていればステロイドの副作用が起こらないという事ではありません。
この事実をよく理解しないと、安易にステロイドを使ってしまう事になってしまうので注意が必要です。

プロポリス
プロポリスは、ミツバチが樹木から集めた樹液や花粉、ミツバチ自身の唾液等が混ざり合った抗生物質様作用を有する物質の事で、各社によって品質のバラツキが有る様です。
こちらも使用して調子の良い人と悪化する人がいます。やはり少量でお試しする事をおすすめします。

まとめ
上記以外にもいろいろな民間療法や健康食品が有ると思いますが、アトピーを引き起こしている内臓機能失調や内面の冷えには目が向けられていません。
「木を見て山を見ず」という言葉が有るように、アトピーの本質を見ずに皮膚に現れている現象のみを追求しても、いつまでたっても山を見ることは出来ないでしょう。
これをふまえてアトピーで苦しんでいる人は、この現実を直視し甘い言葉やうたい文句に振り回されず強い信念を持ってください。


アトピーとダニ等のアレルゲンについて

皮膚科では、ダニ等のアレルゲンはアレルギーを引き起こす物質を特定する為に必要不可欠な物として認識されています。
ダニは確かにアレルギーを引き起こす事がわかっていますが、ダニが多い所では必ずアトピーが発生していますか?
もしアトピーの人がいるとしてもその家族全員がアトピーになっているでしょうか?
そんな事はありません。
もちろんダニが多い環境は決してよくありません。
こまめに掃除をして清潔にする事はアトピーに限らず全ての人に共通して良い事です。
ではダニをこの地球上から絶滅させる事が出きるでしょうか。
これも無理です。
つまり、アレルゲンが有るからアトピーを起こすのではなく、アレルギーを引き起こす生体側に問題が有ると考える方がごく自然な考え方ではないでしょうか。
この生体側の問題、特に内面の冷えを解決せずにアレルゲンの除去ばかりに目がいくと、行きつくところは無菌室ではないでしょうか。
無菌室で一生を過ごすなんて考えただけでも恐ろしいですね。
清潔にしてダニを防ぐ事は大切ですが、あまりにも神経質になって一日中掃除にあけくれる人がいますが、時間と労力の無駄になりかねません。
ダニに限らずアレルゲンと認められた物が分かったらそれを完全除去しようと考えず、清潔を心がけアレルゲンを遠ざける様にすれば良いでしょう。
むしろ漢方薬等で内面の冷えを改善させ、自然治癒力を高めてあげる方が先決です。

体内の冷えとアトピー性皮膚炎

体内の冷えがアトピーの主要因となる事は既に述べました。
では、体内の冷えは具体的に何を起こすかを考えてみましょう。
体内に冷えがあると、自然治癒力が低下し解毒や排泄がうまく行かない事は既に述べました。
人間は生まれながらに生命という炎を持って生まれてきます。
これをロウソクの炎で例えてみますとアトピーの原因がわかりやすくなります。

ロウソク

正常なロウソクは、適度なロウを燃やしながら炎を保ちます。
しかし、病気が発生するとこのロウソクに異変が生じます。
ロウの量が変化する。
または、炎の状態が変化します。
アトピーの場合、このロウの部分に余分なロウが付着する事と、炎が弱っている事が原因となります。
余分なロウを作り出す原因は、ほとんどがチョコレートやケーキ等の砂糖を多く含んだ物を摂取している事です。
こういった食生活が長く続けば、正常なロウソクの状態から異常にロウが増えた病的なロウソクの状態になってしまうのです。
しかし、人間は自然治癒力が備わっていますので何とか余分なロウを燃焼させて正常なロウソクの状態を保とうとします。
燃焼するわけですから、これがアトピーでの炎症反応になります。
しかし、体内の冷えがあるとロウソクの炎は弱くなっているので、どんどん入ってくる余分なロウを燃やして使い切る事ができません。
結局体内での余分なロウは増えてしまうばかりで、減らないのです。
ですから、いつまでも中途半端な炎で余分なロウを燃やしつづけなければいけなくなります。
燃やしても燃やしても余分なロウは減りませんので、炎症反応は永遠と繰り返されてしまいます。
これを解消する為にも、体内の冷えを取り積極的に余分なロウを燃焼させて正常なロウソクにしてあげなければいけません。
余分なロウを燃焼させる為には体内の冷えは致命傷とも言えます。
こういった理由で、体内の冷えが余分なロウを燃やす事ができない悪循環にあると言えます。

アトピー性皮膚炎の痒みについて

痒みは体内の水毒や血毒を体外へ排泄したい表れですから、掻いてもほとんど問題ありません。
しかし、汚れた手で掻いたり、皮膚をえぐるまで掻いてしまうと容易に細菌やウイルス感染を引き起こしてしまいますのでこれは注意が必要です。
掻く時は、汚れた手では掻かないでください。
入浴時に患部をマッサージするように掻くといいです。

アトピー性皮膚炎の食事療法

アトピーの食事療法は非常に重要です。
体内への入口はほとんどが腸からですから、食事が一番大切という事になります。 アトピーの方の食事では水毒や血毒を作ってしまう食品を食べないようにする事が大切です。 
×砂糖、チョコレート、アイスクリーム、スナック菓子、スポーツ飲料、牛乳 、揚げ物等

食事は非常に大切で、ほとんどの方が1日3食30品目食べる事が良い事と思い込んでいます。
現代人の食生活は飽食時代の食生活ですから、どちらかと言えば3食しっかりと食べると過食になっている人が多いです。
過食は気をつけなければいけません。
食欲が無い場合、無理して食事を摂らなくても大丈夫です。
体内に水毒や血毒を生じさせないように食生活を改める事がアトピー改善への第一歩です。

漢方療法

食事に気をつけたらこれからは漢方療法です。
漢方薬は体内の冷えを改善させる処方を中心にします。
体内の冷えは水毒や血毒の吸収と排泄、自然治癒力と非常に強い関わりがあります。
特に消化器系統の冷えが強いと、水毒や血毒は蓄積されてしまいます。
蓄積された水毒や血毒はある程度排泄が行なわれますが、やはり体内の冷えがあると解毒排泄能力も弱く、完全に排泄させるまでに至りません。
ですから、漢方薬は内面の冷えを改善させる処方を中心に、冷えが起こす気、血、津液(水)のアンバランスを改善させるように適宜調整します。
また、半身浴も非常に有効なので、漢方療法と併用して行なってください。
半身浴は内面を温め、解毒、排泄機能を強化します。

漢方薬治療を受けている人へのアドバイス

アトピー性皮膚炎の漢方治療における問題点を列記します。
皮膚に現れた症状を抑えようとするステロイドは、対症療法と言う事は皆さんが一番よく知っている事だと思います。
漢方薬にもステロイドと同じように症状を楽にさせようとする処方があります。
それは瀉剤に分類される清熱剤です。
清熱剤は皮膚の炎症を取る働きがあり、清熱剤には以下の処方等がよく使われています。

黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)
温清飲(ウンセイイン)
消風散(ショウフウサン)
白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)
竜胆瀉肝湯(リュウタンシャカントウ)
荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)
柴胡清肝湯(サイコセイカントウ)
梔子柏皮湯(シシハクヒトウ)等々

漢方治療を受けた事がある方はこれらの漢方薬を一度は飲んだ事があるかもしれません。
これらの漢方薬は皮膚の炎症を取ってくれて症状が楽になる場合もあると思いますが、これらでは完治には至らない事が多いです。
なぜならば、皮膚表面の炎症を取っても対症療法にしかなっていないので皮膚炎は再発しやすくなります。
漢方薬を飲んで最初は良かったけど何度も再発する人は、これらの漢方薬だけでは改善が難しいと言えます。
アトピーの改善には、内面の冷えを取り、自然治癒力を強め解毒、排泄を促す必要があります。

良化の目安

皮膚病はどうしても皮膚の症状ばかりに目が行きますが、皮膚の状態に一喜一憂せずに漢方薬の良化反応を覚えておくと良いでしょう。

食欲が出てくる,便通が良くなる、尿の出方が良くなる、汗のかき方が正常化する、風邪をひきにくくなる、傷の治りが早くなる、疲れにくくなる、体温が36度台になる、舌の状態が正常化する等が現れて来たら、良化の兆しと思って良いでしょう。

正常舌の写真を参照してください。舌の色は淡紅、苔は薄くベットリと苔がつかない、歯型がついていない、舌の裏の静脈が怒張していない事

正常舌

 

正常舌裏

舌でわかる体の状態も参考にしてください。

皮膚があまり良くなっていなくても、上記の良化の目安が起こっている場合、体の中は正常化しているので不安を持たずに頑張ってください。